公正な移行と労働者の権利保護の鍵は組合の組織率
2025-04-23
2025年4月20日、公正な移行に関するアジア太平洋地域会議がクアラルンプールで開催され、地域全体から60人以上の労働運動家が集まり、脱炭素化、エネルギー転換、デジタル・テクノロジーの変革がもたらす課題への共同の取り組みについて議論した。
参加者は、雇用と所得の喪失、社会対話プロセスからの組合の排除、不安定雇用労働者の組織化の難しさなど、いくつかの懸念を明らかにした。これらの問題に取り組み、真に公正な移行を確保するためには、組織率を高め、組合の力を強化することが不可欠であるとの強いコンセンサスが得られた。
特にエネルギー・鉱業部門では、組合の強いプレゼンスがなければ、使用者や政府は政策協議から労働組合を締め出すことが多い。移行政策によって最も直接的な影響を受けるのはこれらの部門の労働者であるにもかかわらず、多くの場合、労働組合の代わりにいわゆる専門家が招かれている。
「組合の組織率が最も重要である。政府や 使用者に無視されることのない、公正な移行を求める強い声を上げるには、労働者と組合の団結が不可欠だ」。
とインダストリオール書記次長の松崎寛は言う。
「例えば、バッテリーのサプライチェーンの要であるニッケル鉱山のいくつかでは、まだ十分に組合が代表できていない。私たちは、交渉のテーブルにつく場所を確保するためにニッケル部門と再生可能エネルギー部門全体で労働者を組織化しなければならない」と述べた。
参加者は、労働組合が正式な政策枠組みの内外で積極的な役割を果たす必要性を強調した。オーストラリアのネット・ゼロ・エコノミー機関、シンガポールの企業訓練委員会、フィリピンの鉱業三者協議会などがその例で、いずれも制度的メカニズムを通じた組合参加の道を提供している。
インドネシアでは、ある組合が組合員に対する効果的な草の根教育を実施した結果、鉱山会社との労働協約に「公正な移行」の文言を盛り込むことに成功した。パキスタンとバングラデシュでは、組合指導者が工業化 に関連する排出の構造的原因に取り組む必要性を強調 し、グローバル・サウス(南半球)の組合を動員して不十分 な政策解決策に異議を唱え、人々の意識を高めるよう呼び かけた。
参加者はまた、排出量を削減し、温暖化を摂氏1.5度に抑えるというパリ協定の下での世界的な約束にもかかわらず、中国、インド、インドネシアで石炭生産が増加し、2024年には合計90億トンを超えることを指摘し、世界的な気候変動対策における矛盾を強調した。
人工知能と自動化をめぐる懸念も提起された。フィリピンの労働組合は、労働協約に「省力化装置」条項を盛り込み、新技術の導入時に労働者が失業しないようにすることを提案した。
公正な移行は、組合と進歩的な 同盟の連帯を築き、労働運動を活性化させるために活用されなければならない、と彼らは主張した。
インドのあるインダストリオール加盟組合は、労働者の再教育と生産性向上のために 企業との交渉に成功し、雇用を維持しながら労働時間の短縮を確保した。他のインドの加盟組織は、過去の産業革命との類似性を引き 出し、今日の課題には統一的かつ戦略的な組合の対応が必要だと強調した。
会議は行動への呼びかけで締めくくられ、労働者主導の「公正な移行」を 形成するための主要戦略が強調された:
- 労働者中心の持続可能な産業政策を提唱する。
- 公正な移行枠組みを策定・実施する。
- 政策・意思決定への組合の参加を確保する。
- 地域的・南-北・南-南の労働組合協力を強化する
- 支援的な政策・投資枠組みを推進する
- 貿易協定に労働権を盛り込む
- 再生可能エネルギー部門で戦略的組織化キャンペーンを開始する
- 公正な移行計画にジェンダーと青年を主流化する